みなさんはどれくらい小説を読みますか?
勉強や自己啓発のために実用書を読む人はたくさんいるかもしれませんが、自分の成長のために小説を読むという発想を持っている人は多くないかもしれません。
実は、有名な経営者やノーベル賞受賞者は文学を含め日常的に芸術に触れている人が多いという統計データがあります。さらには、凶悪犯罪を犯した人たちには小説を読まない人が多かったというデータもあるくらい、小説を読むことはとても大切です。
この記事では、大学生のみなさんが小説を読むべき3つの理由をお話します。
それからそれから、阪大生に特にオススメの小説5冊も紹介するので、ぜひ参考にしてください!
この記事を読み終わるころには、あなたは小説への渇望でよだれを垂れ、人の血肉を求めさまよう悪鬼羅刹のごとく文学作品を求めて最寄りの書店を襲撃し、小説コーナーの書棚をひっくり返しては狂気の眼で本を漁り散らかしていることでしょう。
Contents
小説を読むべき3つの理由
①単純に楽しい!読書慣れできる!
小説を読むことは、純粋に娯楽として楽しむことができます。
バイトで疲れて帰ってきた日の寝る前の30分に、続きが気になる小説であれば読む気力も湧きますが、理解に根気と集中力の要る実用書はページをめくる手が重たいですよね。
読書の習慣が身につくことは人生を一変させるほどの価値がありますが、いきなりハードルを上げてしまうと習慣化しづらいものです。
まずは楽しんで読める小説から読書習慣を始め、
「日々読書をするのが当たり前」
という状況を作ってから難しい本に挑戦するのがオススメです。
まずは楽しめる小説から始めて読書習慣を徐々に身に付けていきましょう。
②世界の見方が豊かになり、心が穏やかになる
文学作品は、ストーリーや登場人物、状況を言葉で表現します。
私たちが普段何気なしに見て感じている状況や感情は、意識しなければあえて言葉にすることはありませんが、小説は言葉を使ったアートである以上、言葉を使って表現せざるを得ません。
日常でみなさんが感じる感覚や感情を、小説は言葉を使って美しく表現してくれます。
人は言葉にすることで対象を明確に意識し、分析したり、より深く味わったりすることができるようになります。
たとえば、小説を読む中で
「片思いのときに感じるあの心の感覚、こういう言葉で表現できるんだ!」
といった発見があったり、
「そよ風が心地よく頬を撫でた」
という表現を読むことで、次に同じ経験をしたときに、その心地よさをより一層深く味わうことができるようになります。
経験や感情は、言葉にすることでより鮮明で、より味わい深くなり、必要であれば客観的に眺めて上手に距離を取ることができるようになります。小説は、みなさんが日々感じる感覚や感情の動きを、豊かで美しい語彙で表現する手助けをしてくれます。
③生き方や価値観が磨かれる
みなさんにとっての「素敵な生き方」「かっこいい生き様」「幸せな人生」ってどんなものですか?
小説の中には、価値観や行動原理の異なる様々な人物が登場します。
私たち読者は、それぞれの登場人物に対して好印象を抱いたり、嫌悪感を抱いたり、憧れたり蔑んだり、共感したり怒りを感じたりします。その過程で「こんな生き方に憧れる」「こんな生き方は無様でかっこ悪い」といった感覚を自然と作り上げていきます。
「かっこいい生き方」「人としての美しいあり方」とは何か。
「豊かな社会」「幸せな人生」とはどんなものか。
ストーリーに触れることで、こうした深淵な問いを掘り下げ、真善美の感覚をより洗練されたものに練り上げていくことができるのです。
話が少し脇道に逸れますが、日本中を震撼させた数々の事件を起こしたオウム真理教の幹部層の人たちには、2つの興味深い特徴がありました。
1つは、上位国公立大学出身のエリートが多かったことです。
もう1つの特徴は、あまり知られてはいませんが、芸術分野の趣味を持っている割合が有意に低かったことです。特に小説などの文学作品にほとんど親しんでいなかったことが分かっています。
人生や社会に対する真善美を欠き、人としての美しいあり方の感覚が歪んでしまっている人は、たとえ頭は良くても、その能力を正しい方向に活用することができません。
オウム真理教の例は非常に極端なケースではありますが、論理的・科学的な思考力だけを身に付け、共感性や生き方の美学を磨いてこなかった人たちがたどる末路を象徴しているように思えます。
阪大生のみなさんのすばらしい才能を、自分自身の幸せや社会の豊かさに正しく活かしていくためにも、ぜひ素晴らしいストーリーにたくさん触れてほしいと思います。
阪大生にオススメの小説5選
ということで、もう小説が読みたくてたまらなくなっている頃でしょう。
「でも何を読めばいいのかわからない!ゔーーーーーー!」
と唸り散らかしているあなたのために、厳選した5作品をご紹介します。
・有川浩『阪急電車』(恋愛小説?)
阪急沿線の民としてはぜひとも読んでおきたい作品です!
描かれているのは宝塚線ではなく今津線ですが!!あの小豆色の車体とポップな発車メロディーに故郷のような安心感を憶えてしまう我々阪急沿線の民としては!!やはり読んでおきたい作品ではないでしょうか!!偶然乗り合わせた電車で始まる恋や友情は何だかドキドキしちゃいますね!!!
・森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(恋愛小説)
大学生を主人公にした恋愛ファンタジーの鉄板ですね!京都を舞台に、大学生2人のキュートでポップな恋愛模様を独特の文体でオモチロおかしく描いています。筆者の周りでも、森見登美彦の作品が好きだという阪大生は両手で数え切れないほどいるので、書きぶりが阪大生の趣味嗜好に合うのかもしれません。
・司馬遼太郎『燃えよ剣』(歴史小説)
幕末の京を震撼させた新選組の副長・土方歳三を描いた作品です。とにかく土方が終始カッコいいので、頭を空っぽにして一人の男の生き様のかっこよさ、美しさを堪能できます。歴史小説への入り口としてもおすすめです。
・山本兼一『利休にたずねよ』(歴史小説)
茶の湯を大成させ、秀吉をも遠慮させた茶人・千利休のふてぶてしいまでに大きな器量と、その裏に隠された切ない恋を上品な筆致で描いています。利休と秀吉、利休とその妻との人間関係の機微を生々しくも美しい描写で表現していて、読み進めるごとに人間理解が深まる気がします。
・アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』(SF小説)
SF小説といえばコレ!という作品です。出版されたのは1952年ですが、科学技術の発展によって21世紀の人類が直面している状況や、これからの21世紀の展望を驚くほど正確に予言しています。「現代の知識や技術で当たり前に思われていることが、未来にはどう移り変わっているだろうか」ということを考えるヒントを与えてくれる点も素敵ですが、その他にも、繰り返し読むたびに新しい気付きや学びがあるスルメのような作品です。
まとめ
ということで、小説を読むべき理由やオススメの小説についてお話してきました。
読書はもちろん、新しい知識や考え方などの情報的価値もたくさん与えてくれますが、小説から得られる感情的な価値も同じくらい意義深いものです。
最後にみなさんに1つだけ。
小説の楽しみ方に正解はありません。
「著者はどういうメッセージを伝えたくて書いたのか?」と考察するのは楽しいですが、難しく考える必要はありません。
「傍線部①を述べたときの彼女の気持ちに当てはまるものを以下のア〜エから選択せよ」なんてことはもう訊かれることはないので、読んだときの自分の心に沸き起こった感情をただ楽しめばよいのです。
ぜひ書店にふらっと足を運んで、自分の心の琴線に触れた小説を手にとって、楽な気持ちで読んでみてください。きっと、大学生活やその後の人生を豊かにしてくれるステキな感情的経験がそこにあるはずです。