「あー、課題やらなくちゃ。でも今日は遅いし明日でいっか。」
「ダイエット中だしなぁ。でも明日からまた頑張ればいいか、クッキー食べちゃえ。」
「将来のためには資格の勉強しなくちゃなぁ。でも今日は友達と飲みに行って、明日からやろう!」
皆さんはこのように自分のその時の欲求に負けたことはありませんか?
ちなみに僕はめちゃくちゃあります。
何を隠そう上に示した例はすべて僕の実体験なのです。
人は誰しも「やるべきこと」「やめるべきこと」「叶えたいこと」を持っているでしょう。
しかし、努力やモチベーションを維持し続けることは簡単なことではありません。
そこで今回はそんな人にはぴったりの一冊。
「スタンフォードの自分を変える教室」
を紹介したいと思います。
この本の著者ケリー・マクゴニガルは考えました。
意志力 ― 注意力や感情、欲望をコントロールできる能力 ― が仕事や健康、人間関係にまで影響を及ぼしているのではないか。
それを培うことでより良い生活を送ることができるのではないか。
この本では心理学、神経科学、医学などさまざまな視点からの実験実証を交えながら、どのような悩みにどう対処していくべきかを具体的に示してくれています。
きっとあなたと同じ悩みを抱えている人の事例に触れ、その解決策を得られることでしょう。
そしてこの本を読み終える頃には、明日までの課題があるのにもかかわらず、テレビの前に寝転がって罪悪感たっぷりにポテチを食べるようなあなたとはおさらばできるはずです。

「自分を変える教室」へようこそ
誘惑や依存症に苦しんだり
物事を先延ばしにしたり
やる気が出なかったりして
困った経験のある方々
— つまり、すべての人 —
に本書を捧げます。
この本はケリーのこの言葉から始まります。
誰しもこの言葉にあるような悩みを持っているのではないでしょうか。
彼女はこれらの原因を「意志力の弱さ」であると考えました。
誰だって食事や行動や言動、それに買い物をはじめとした生活のあらゆる面において自分をコントロールしなければならないことはわかっています。
しかし、うまくコントロールできたかに思ってもすぐに流され、自分を抑えられなくなってしまうことが多々あります。
米国心理学会によるとアメリカ人がその最大の原因として「意志力の弱さ」をあげているのです。
そこでスタンフォード大学の健康心理学であるケリーが、大学の講義や一般公演、そしてこの著書を通して
心理学、経済学、神経科学、医学の各分野から自己コントロールに関する最新の見解を取り上げ、
「どうしたら悪い習慣を捨てて健康的な習慣を身につけられるか」
「どうしたら物事をぐずぐずと先延ばしにしないようになれるか」
「集中すべき物事を決め、ストレスとうまく付き合うにはどうしたら良いか」
を説明します。
そして
「私たちはなぜ誘惑に負けてしまうのか」
「どうしたら誘惑に打ち勝つ強さを身につけられるのか」
を解き明かしていきます。
この本をおすすめしたい人
この本を通して「意志力の科学」を理解することで自己コントロールを伸ばす方法が分かり、
自分にとっても最も重要なことを追求する強さを育むことができます。
そのため上記に示したように悪い習慣を捨てられなかったり、
何事も先延ばししてしまったり、誘惑に負けやすかったりするすべての人にとって価値のある知恵を得ることができます。
この本は最新の科学的見解にプラスして、ケリーが実際に行った大学の講義での実践的なエクササイズを融合したものなので、
これまで受講した何百人もの受講生の経験と知恵が結集しています。
必ずや、あなたが求めている発見に出会うことができます。
この本の使い方
この本は10週間の講座を受講するようなかたちで構成されています。
したがって全部で10章ありますが、各章で重要なポイントをひとつ挙げて
その科学的な根拠を説明し、それをどうやって読者の目標達成に役立てるかについて説明しています。
そのため数日で一気に読んでしまうというよりは、各章を1週間かけて戦略を実施することを著者は推奨しています。
そうすることでどんな方法が自分にあっているのかに気づくことができ、
本文の例に登場する受講者のやり方を読んで参考にすることもできます。
もちろん何度も本を読んで何度も実践するも良し!
とりあえず一通り読んでみて面白そうなものをメモするも良し!
自分のやり方で実践につなげてみてください。
それではここで、ちょこっとだけ本文の内容を紹介してみたいと思います。
実際に体験してみよう
この本では、それぞれの章で「課題」が提示され、その「解決法」を示してくれます。
ここでは僕自身が注目した一例を紹介します。
【課題】なんでもあとで取り返せると思っていませんか?
何かを決断するときに、
「今日はダメでも明日取り返せばいいや」
という思いが頭によぎることはありませんか?
ツケを次の日に回したときに本当にそれを取り返せているのでしょうか?
ある調査において、エクササイズの器具を購入した消費者に質問をしました。
最初のグループには
「来月は1週間に何回くらいエクササイズをしようと思いますか?」
もうひとつのグループには
「仕事や勉強に追われて気が散るし、疲れている日もあるだろうけど
理想的には、来月は1週間に何回くらいエクササイズをしようと思いますか?」
さて、この結果はどうなったのでしょうか。
なんと、この質問の回答において両グループに大きな差異は見られなかったのです。
つまり、人は普段から未来のことに対して理想的な考えで動いていることがわかります。
実際には課題に追われてやらなかったり、疲れ果てて寝てしまったり、
友達に誘われた飲み会に行ってサボったりするのにもかかわらず、です。
その2週間後、この間に何回エクササイズを行ったかについて質問しました。
すると、報告された回数はやはり予想を下回っていました。
そこでもう一度以下のような質問をしました。
「次の2週間で何回エクササイズをしようと思っていますか?」
驚くことに被験者たちは1回目の予想をさらに上回る回数を答えました。
このように最初の2週間の結果を現実として受け入れることなく、これを例外として受け止め、より非現実的な目標を立ててしまっています。
それではどうしたらこの失敗を防ぐことができるのでしょうか。
【解決法】「明日も同じ行動をする」と考える
行動を変えることを明日に伸ばしてしまうのなら、行動自体を変えるのではなく、日によって行動にばらつきが出ないように指示しました。
喫煙者に、タバコを吸うなら「毎日同じ本数」を吸うように指示しました。
すると面白いことに、彼らの喫煙量が減っていくという結果が得られたのです。
今日タバコを一本多く吸えば、次の日も同じだけ吸わなくてはいけません。
するとタバコ一本に対する罪悪感の重みが増していきます。
そのため長期間でも体に及ぼす悪影響を無視できなくなるのです。
つまり、
「新しい器具も買ったことだし、エクササイズを今日やった方がいいかなぁ。いや、明日でもいいかなぁ」
と考えるのではなく、
「どうせ明日も辛いことはやりたくないんだから、今日やらないと器具を買ったのも無駄にするし、これからもずっとナイスバディにはなれないけどいいの?」
と問いかけてみるといいかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
自分に思い当たる節はあったでしょうか。
あくまでも上の例は一例に過ぎません。
人によって得意なこと、不得意なことがあると思います。
逆にいうとすべて完璧にできて、悩みのない人など存在しません。
この本を通して、自分の課題を解決するだけでなく、自分の課題そのものを発見することができます。
その上で科学的なデータを参考に一緒に課題解決に取り組んでみましょう。
この本を読み終わる頃には以前とは一味違う自分になっていること間違いありません。
そんな自分を想像するとワクワクしてきませんか?
書籍情報
【書籍名】スタンフォードの自分を変える教室
【著者】ケリー・マクゴニガル
スタンフォード大学で博士号(心理学)を取得。同大学の健康心理学者。心理学、神経科学、
医学の最新知見を用いて、人々の健康や幸福、成功、人間関係の工場に役立つ実践的な戦略を提供する「サイエンス・ヘルプ」のリーダーとして、世界的に注目を集める。
メディアでも広く取り上げられ、「フォーブス」の「人々を最もインスパイアする女性20人」に選ばれている。TEDプレゼンテーション「ストレスと上手に付き合う方法」は900万回超の再生回数を記録。
著書に『DVDブック 最高の自分を引き出す法』(大和書房)、『The Neuroscience of Change』(オーディオブック/未邦訳)などがある。大学での講義のほか、活発な公演活動のかたわら、心身相関を重んじる立場からグループフィットネス、ヨガの指導も行っている。
【翻訳者】神崎 朗子
翻訳家。上智大学文学部英文学科卒業。訳書に『フランス人は10着しか服を持たない』、『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』(ともに大和書房)、『ぼくたちが見た世界 ― 自閉症者によって綴られた物語』(柏書房)などがある。