こんにちは!ライターのNatsuです。
突然ですが、大阪公立大学の英語名称をめぐり、阪大と大阪公立大学(仮称)でバトルが繰り広げられたのをご存じですか?
なんかあったのは知ってるけど、結局なにがどうなったのかは知らないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、その全貌を明らかにすべく、2020年6月から話題になった、大阪公立大学の英語名称をめぐる大阪大学の抗議について、時系列に沿って決着までの流れを紹介します。
Contents
1:大阪公立大学の英語名称公式発表
(2020年6月26日「大阪公立大学(仮称)英語名称のお知らせ」)
まず、大阪公立大学がHPで「大阪府立大学・大阪市立大学が融合して新たに設置する新大学(2022年4月開学予定:設置構想中)の名称が『大阪公立大学(英語表記:University of Osaka)』に決定した」という旨の発表を行いました。
参照:<https://www.upc-osaka.ac.jp/topics/20200626/>
阪大の英語名称は「Osaka University」なので、大阪公立大学が発表した「University of Osaka」は阪大生がみても阪大のことだと勘違いしそうな名称ですね。
これに対し、阪大が4回にわたる抗議を行います。
2:阪大による抗議①~University of Osakaはややこしい~
(2020年6月26日「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」)
阪大は大阪公立大学の声明が出された当日にHPで「大阪公立大学の英語名称が『University of Osaka』と決定されたとの報道があり、大変驚いている。大阪大学の英語名称『OSAKA UNIVERSITY』は、長年にわたり使用している名称であり、海外においても広く認識され、定着している。大阪公立大学の英語名称はこれと酷似している。多くの関係者の混乱を招くことのないよう配慮をお願いしたい。」という旨の声明を発表しました。
参照:<https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/06/2601>
つまり、「University of Osakaは阪大を指すOsaka universityとそっくりだから大阪公立大学の英語名称を考え直して欲しい!」と阪大が言ったということですね。
大阪公立大学の発表当日に、阪大が声明を出しているところに阪大の本気度がうかがえますね。
3:阪大による抗議②~University of Osakaは阪大として認知されている~
(2020年6月29日「『University of Osaka』が大阪大学の英語名称として使用されている実態」)
続いて阪大はHP上で「大阪大学が国際的に『Osaka University』だけでなく『University of Osaka』としても広く認知されている」ことを、具体例を多く挙げつつ4つの論拠から力説し、大阪公立大学の名称の再考を要請する声明を発表しました。
論拠① 「University of Osaka」は、大阪大学(Osaka University)と同義であるとすでに認知されており、これまでにも海外で広く使われてきた。
論拠② 「University of Osaka」は学術論文や学術書においても、大阪大学の英語名として長期間使われてきた。
論拠③ 英語圏以外でも、「Osaka University」と「University of Osaka」を区別できない例がある。
論拠④ 一般市民が大学についての情報を得る際には、インターネットが極めて大きな役割を果たすが、ネット上では「Osaka University」、「University of Osaka」はリンクされ、常に相互参照可能となっている。
参照:<https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/06/0629>
つまり、「現時点でUniversity of Osakaは阪大を示す名前として使われているから、大阪公立大学は他の英語名称を使って!」と阪大が言ったということですね。
これも大阪公立大学の発表から3日しかたってないとは思えないほどの綿密なリサーチですね。
4:阪大による抗議③~特に海外で混乱を招く~
(2020年8月6日「大阪公立大学の英語名称にかかる問題点について(第3報)」)
「大阪公立大学から現在までに再考する旨の回答をもらっていない。また、その後の報道等によると、『全国の大学でも同様の例がすでに複数あり、混乱もしていないので問題はない』といったコメントがなされた。」ことを受け、阪大は更なる根拠事例とともに、大学名の酷似から起こりうる問題点を4つ挙げ、自身の立場の説明をHPで行いました。
(1)国内の他の事例では、学部・大学院の名称の重複がない
(2)留学生による大学名の混同
(3)論文における所属機関の混同
(4)「University of Osaka」と「Osaka University」は海外では同一視
参照:<https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/08/20200806>
つまり、「特に海外の人はUniversity of OsakaとOsaka universityは一緒だと思っているから、大阪公立大学がUniversity of Osakaを名乗ったら混乱するからやめて!」と阪大が言っているということですね。
調べていて、いつのまに留学生向けのアンケートまで実施していたんだ!?と私も驚きました。
5:阪大による抗議④~University of Osaka反対の根拠を特許庁に提出~
(2020年8月21日「大阪公立大学の英語名称にかかる問題点について(第4報) 〔特許庁への情報提供について〕」)
阪大は、大阪公立大学が、令和2年6月18日に特許庁に対し「University of Osaka」を商標登録出願していることに対し、当該登録は認められるべきではないとして 特許庁が設けている情報提供制度を利用し、合計約1500件の刊行物等を特許庁に提出したという旨の声明を刊行物等の内容とともにHP上に出しました。
(1)「University of Osaka」が「大阪大学」の英訳として使用されている論文・講演要旨等 約960件
(2)学術に係る国内外の英語の文章(外国の大学のWebサイト等)であって、大阪大学の名称として「University of Osaka」を使用しているもの等 約340件
(3)「University of Osaka」と「Osaka University」とが併用されている講演要旨等や学術に係る国内外の英語の文章 約170件
(4)一般的に、大学の名称として「(地名)+University」と「University of(地名)」とが同じ意味であることを示す資料等 約40件
(5)外国の在日大使館のホームページにおいて、大阪大学を「University of Osaka」と表記した広報記事
(6)大阪府が作成した英語版ガイドブックで、大阪大学を「University of Osaka」と記載しているもの
参照:<https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/08/20200821001>
つまり、阪大は大阪公立大学がUniversity of Osakaを名乗るべきでないとする証拠をたくさん特許庁に提出したということですね。
1500件もよく集めたな、、、と阪大の立場を支持する阪大生でさえ若干引いてしまうくらいの気迫を感じます。
6:大阪公立大学の名称変更
(2021年3月12日「大阪公立大学(仮称)英語名称のお知らせ」)
大阪公立大学はHP上で「2022年4月に開学予定の大阪公立大学(仮称・設置認可申請中)の英語名称をOsaka Metropolitan University(tentative name)に決定する運びとなった。」旨を発表しました。
参照:<https://www.upc-osaka.ac.jp/topics/210312>
7:阪大のコメント(2021年3月12日「大阪公立大学の英語名称について」)
阪大はこの決定を受けHP上で、大阪大学の思いを理解し、名称変更の決断をしていただいた大阪公立大学の関係者への感謝、両大学が理解を深めるかたちで解決できたことへの喜び、本件について支援いただいた皆様への感謝を表すコメントをしていました。
参照:<https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2021/3/20210312001>
以上のように、大阪大学と大阪公立大学間の英語名称対決は2020年6月から2021年3月までの約9ヶ月間にわたって行われた結果、阪大の要請が通り、大阪公立大学の英語名称がOsaka Metropolitan Universityとなることで決着を迎えました。
私個人は、University of Osakaは大阪大学を表すOsaka universityに酷似しており関係者の混乱を招くため適当でないという阪大の意見に賛成だったので、阪大の要請が通ったことに安堵しています。また、謙虚な姿勢で徹底的に抗議する阪大に学問機関としての威厳を感じました。
みなさんはどのように感じましたか?
最後までご覧いただきありがとうございました。