こんにちは!ライターのLeonです!
我々人間は、あるチンパンジーとの間で構成遺伝子の98%以上を共有していることを知っていますか?
遺伝子の観点から見るとその違いはわずかなものでしかないにもかかわらず、このわずかな違いが私たちに特有な性質をもたらしています。
今回は、ジャレド・ダイアモンド博士の著書「若い読者のための第三のチンパンジー」を紹介します。
この本では、人類がわずか数万年のうちで言語や芸術、高度なライフサイクルを身につけた一方で、
自らの種を殺戮したり他の種を絶滅に追いやったりする能力をどうやって発展させてきたのかを様々な科学的知見からアプローチした一冊となっています。
これを読めば人間の行動や生活スタイルに対する新たな見方が得られるかもしれません。
それではこの本の魅力に触れてみましょう!!
Contents
第三のチンパンジー
「ヒト」は「チンパンジー(コモンチンパンジー、ボノボ)」とはDNAの98.4%が同じであり、
言うなれば人間は第三のチンパンジーであるという筆者の見方がタイトルの由来になっています。
確かに人間とは哺乳類の一種であり、他の種と同様に食べ物を食べ、手足を動かし、
子孫を作っているという点では他の動物と同様に区分されるべきかもしれません。
しかしそれと同時に、明らかに他の動物にはない特殊な特徴 ― 言語、芸術、その他あらゆるライフスタイル ー を我々は持っています。
なぜたった1.6%の違いが他の生物との大きな違いを生み出し、
なぜ人間だけこれほど特異的で奇妙な動物であるのか。
「人間」とはなんなのか。
これが著者ダイアモンド博士のこの本における問題提起であり、一貫したテーマでもあります。
例えば、著者によると人間は他の動物には見られない様々な特徴があるといいます。
・言語をもち、無数の語彙とそれを組み立てる文法の確立が世界各地で行われてきたこと。
・種の繁栄という意味では一見意味をなさない芸術の発達、またそれを娯楽としてきた背景。
・性行動のほとんどが妊娠を目的としないものであり、またそれらを他人から隠すこと。
体に害があると理解しているにもかかわらず、タバコを吸い、危険な薬物にふけること。
分子生理学、進化生理学、生物地理学等の幅広い分野から壮大なスケールで
「人間とは何か」
について問いかけている一冊になっています。

「第三のチンパンジー」をオススメしたい人
この本はこんな人たちにオススメです!
・あらゆる角度から多面的に物事を見ることが好きな人
・人間の進化論や行動学に興味がある人
・人類を客観的に見ることで自分の価値観を変えたい人
世の中には様々な考え方、ものの見方があることを知り、新たな価値観を得られることができます!
その中にあなたが共感できるものが見つかるかもしれません!
「第三のチンパンジー」を読んでわかること
ヒトの性行動
ヒト以外の哺乳類からするとヒトの性行動は極めて奇妙なものであると筆者は主張しています。
ヒト以外の動物の雌は発情期以外では決して雄と交尾をせず、
排卵を迎えるとその事実を雄に宣伝するために行動で示し、時には見た目にも変化が生じます。
一方で、ヒトの女性は排卵の時期を男性に教えてまわることはなく、
それどころか関係を持った男性や当の女性からも巧妙に隠蔽されます。
これらの行動は生物学的に見ると、子孫を残すという点では実に効率の悪い行動であると筆者は考えています。
ヒトが長い年月をかけてこのような行動を取るように進化してきた理由として、
生物学者たちは以下のような理由を挙げています。
・隠された排卵と性交は、男性間の攻撃性を抑制して、協力を引き出すために進化した。
・隠された排卵と性交によって、特定のカップルの絆が強まり、ヒトの家族の基礎ができていった。
・女性は排卵を隠すことで、パートナーと男性を永続的に結びつけ、パートナーが産んだ子どもの父親が自分であると確信させるようにしむけた。
つまり、ヒトという生物は子孫を残すためには子供を産むことだけでなく、
長い間ともに過ごすことで子供を一人前の人間にし、
自立できるまで世話をし続けることこそが最も効率の良い繁殖方法だと見なしたのでしょう。
合わせて読みたい一冊!: 「人間の性はなぜ奇妙に変化したのか」ー ジャレド・ダイアモンド ー
芸術が担っている目的
芸術とは人間の最も高貴でユニークな特徴だと筆者は考えています。
言葉とともに芸術とは、人間と他の生物に間に一線を画するものでありますが、
言葉と違うのは芸術には明確な機能が存在せず、
科学的観点からするとヒトの種としての有用性が見出せないところにあります。
特にお金やその他の生活に必要なもののために芸術を利用するのではなく、
ただ単に芸術を娯楽とみなす人間は、生物学的には一見不要で価値のない行動をとるだけの余裕と能力を持っていると言えるでしょう。
合わせて読みたい一冊!:「アートとは何か:芸術の存在論と目的論」ー アーサー・C.ダントー ー
農業がもたらした光と影
農業とは過去数百万年の人間の歴史において、
より良い生活を送るための紛れもない革新的一歩であると多くの人は考えていますが、
その裏には大きなデメリットがあることが近年明らかになっています。
農業のおかげで食料の生産量は飛躍的に増え、
これはより多くの人がより長く生き延びて生きていけることを意味することになりました。
その一方で栄養失調などの病や人々の間での不平等性、力を持った者による支配といった害をもたらしたのが農業であるのも事実です。
伝染病や寄生虫による病気がはびこるのは人口が密集し、栄養不良の定住者の住む社会に限られ、
住人は互いのあいだで、あるいはみずからの排泄物を介して絶えず病気をうつしあっていました。
また毎日食料を探し求めてその日暮らしをしていた狩猟採集民とは違い、
農業の成果によって生活の水準に差が出る農業を営む集団には貴族のようなエリートが生まれることになります。
この階級の違いが争いや闘争を生み、ヒトは違いに殺戮しあう種となってしまったのです。
合わせて読みたい一冊!:「農業は人類の原罪である」ー コリン・タッジ ー

「第三のチンパンジー」を読んで感じたこと
この本ではダイアモンド博士による学問的な研究を基にしたヒトに対する見方が
根拠を示しながら展開されています。
これらの分野に詳しい人はもちろん、私のような素人にとっても興味深い内容でした。
この本に出てきた考えを、日常で常日頃から頭において生活することはないかもしれませんが
ふとした時に俯瞰的に他人を見ることができたり、冷静に物事を客観視することができるようになると思います。
読んだ人の中には驚きと感嘆を感じた人も多いのではないでしょうか。
上記にあげた以外にも紹介しきれなかった内容はたくさんあります。
ー 人類の大躍進
ー 浮気の化学
ー 進化と加齢
ー 言葉の不思議
ー 自己損傷行動のパラドックス
気になるところがあればぜひ読んでみてください。
まとめ
我々人間は、あるチンパンジーとの間では構成遺伝子の98%以上を共有しています。
この言葉が持つ意味というのをほんの少しは理解していただけたのではないでしょうか。
他の生物と似ているところ、違うところを知ることで他の種に対しても
そして自らの種に対しても新たな知見が得られ、より視野の広い人間になれること間違いありません。
ぜひこの本を読んでヒトが歩んできた物語の壮大さを感じてみてください。
書籍情報
【書籍名】若い読者のための第三のチンパンジー 人間という動物の進化と未来
【著者】ジャレド・ダイアモンド
1937年ボストン生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。
進化生物学者、生理学者、生物地理学者。アメリカ国家科学賞受賞。
著書『銃・病原菌・鉄』でピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。
【編著者】レベッカ・ステフォフ
【訳者】 秋山 勝
【発行所】草思社
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